INTERVIEW

布を織る人 インタビュー
わたなべさん
糸のご機嫌を伺いながら、
納得できるものを織る

手織りで手間をかけてゆっくり、しっかりと織っていく
池田絣工房の久留米絣。工房で仕事をはじめてからあっという間だったと振り返る、織子歴8年目のわたなべさんに日々の仕事で大切にしていることをお聞きしました。

-わたなべさんは、久留米絣の織り子としてお仕事を始められて、どれくらいになりますか?

私は8年目ですね。友人から誘われて、「面白そうかな、子育てしながらでも大丈夫かな・・・」と本当に気軽な気持ちで始めちゃったんです。いざ入ってみてすぐに「無理っ!無理~っ!こんな難しいこと出来ない~!」って思いました。当時は、朝出てきて織り機の前に座る瞬間からドキドキでしたよ。気を張りながらやってましたもの。あっという間の8年です。

―それでは、こちらの工房で初めて手織りに出会われたのですね。
そこから8年間、経験を積まれて、手織りの面白さも難しさも色々と経験しておられると思います。何か教えて頂けますか?

久留米絣って、経絣 (たてがすり) : ・緯絣 (よこがすり) :・経緯絣 (たてよこがすり) とか、色々な織り方があるんです。

緯絣というのは・・・経糸は無地で緯糸だけくくっているので、緯糸だけで柄を出していくんです。色々な織物に使われている方法だと思います。絣を合わせる調整は、緯絣がしやすいかな。

  • 緯絣(よこがすり)の柄
  • 経緯絣(たてよこがすり)の柄

私が今織っている経緯絣という方法は、経絣糸と緯絣糸を交差させて模様を作るものになります。その時は両方でくくった糸を使って織っていくので、柄を合わせるのが大変です。でも、緯絣の糸だけでは表現できない柄が出来るから、その織り方も生まれたんでしょうね。「このまま織っていったら、縦と横の柄合わせが段々とズレてきちゃうなぁ」という時に調整するんですけど、経糸の方は1本1本調子を見ながらこうやって釘にかけて調整しています。とにかく、その釘にかけるタイミングが難しい。糸を上げたり下げたりの判断をどのタイミングでするか?を、その都度、悩みながら調整して織っています。

藍色に染まった指先

8年経ってますけど、今でも「お願いね、今日もお願いね!」って、糸のご機嫌をうかがいながら織っています。毎日やっているから同じ作業のように見えると思うけど、違うんです。糸の様子をうかがいながら、「ここは少しずれちゃうから、こうやって調整しよう」と考えながら、手を動かし足を踏み・・・ってやっています。あ、手はね、藍でこういう感じになっちゃうんです。ふふふ。

あとは・・・織り機も古いので大事に使ってます。織ってみてどこか調子が悪くなったら、すぐに師匠(大ベテランの織り子・中尾さん)に「師匠、助けて~!」ってお願いするんです。そうしたら中尾さんがすぐにトンカチ片手に様子を見てくれて。もう無い部品とかもあるから、ここなんかは、丁度いい大きさのものがあったから釘で代用したりしてます。

撮影時にも盛り上がっていた織子さんたちの様子

どんな織り方でも神経を使いながらですけど、ちゃんと納得できるものを織ることが出来るとやっぱり嬉しいです。それと、みんな作業の時はもちろん真面目だけれど、休憩する時はおしゃべりしたりしてます。明るく仕事出来るのが一番ですね。

―久留米絣の中にも、色々な織り方があって、そこから色々な柄が生まれてきたんですね。1人の女の子の好奇心がきっかけで、「久留米絣」という1つの織物が生まれ、突き詰めていったら地域を代表する産業になって、200年後にもこの地方に残っているというのが・・・本当にすごいなぁと思います。それでは、最後にこちらの工房で作っておられる久留米絣の中で、お好きな柄を教えて頂いてもいいですか?

私はステンドグラス柄です。これだと・・・数えていくと・・・14柄になるのかな?一糸一糸織り進めていくと、どんどん色々な柄が出てくることが楽しくて!「織り甲斐があるなぁ」と思います。

わたなべさんが織り甲斐があって好きな柄だという
ステンドグラス柄
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池田絣工房