INTERVIEW
- 糸の違い、織り機の違い、
手の違いが織物の「味」になる
人の手で作られた織物には個性が出ると教えてくれた織子歴17年目のあらたにさん。手織りで織っていく池田絣工房の久留米絣はそれぞれの個性が出ているそう。そんなあらたにさんが作る久留米絣と道具への想いについてお話を伺いました。
―久留米絣の手織りをお仕事として始めてから、どれくらいになられるのですか?
私は、17年目です。親戚の方が織っていて、「やってみない」ということで声をかけてもらったことがきっかけです。それまでは全く、でした。最初は、「素人だし、無地のもので練習させてもらえるのかな~」と思っていたら、何とこれが!「練習や」ってことで、最初から柄入りのものに挑戦したんです!びっくりですよね。ビクビクしながら始めましたね。「いつ辞めようか」「これで本当に上手くなるのかしら」と思いながらです。日々修行でしたよね。今でもですね、今でもずっと修行です。
―「いつ辞めよう」というスタートから、もう17年織っていらっしゃるんですね。大ベテランさんですね。そんな荒谷さんから見て、久留米絣の手織りについて、何か特徴的なことを教えてもらっても良いですか?
やっぱり糸の段階で染めて、柄合わせで模様を生み出しているところですね。そうすることで、丈夫で味がある織物になるんですよね。糸は気分屋さんだけど、正直ですよ。狂いがあったりすると大変。細い方が大変ですね。だから、いつも糸とおしゃべりしながら、相談しながら織っています。それと、私、ここ最近織り機が変わって、それが大変ですね。この織り機、普通の幅よりも少し広いでしょう?あっちの織り機だと幅37㎝、私が織っているものが、たしか・・・幅40㎝だったと思います。これまでの織り機とクセが違うから、まだどうにも苦戦しています。
足踏みすることで筬(おさ)が手前に引かれるので、その踏む強さで打ち込み具合が変わって、糸の密度が変わります。これからもっと馴染ませていかないといけないですね。
こうして人の手で作られた織物ってやっぱり個性が出るんですよね。同じものが無い。
糸の違い、織り機の違い、手の違い・・・その織物の「味」になっていくんだと思います。
―織り機が変わるだけでもまた大変なんですね。荒谷さんの前に歴代使ってこられた方々によって、手織り機自体にクセがあるということですか?そう言えば、どちらの織り機もかなり古そう・・・。こちらも、年季が入った織り機ですね。
はい、やっぱり前に使っている方のクセってあると思います。それと、だいたいどの織り機も相当古いですね。これはたぶん100年は経っているんじゃないでしょうか。廃業されるところから手織り機を譲り受けるんですね。そうして、部品をまわして代用したりしながら。ネジや歯車とか部品が手に入らないものもあるから、大事に扱うようにしています。部品を作る職人さんがもうこの辺りではいらっしゃらないと思いますし・・・。これ、経糸の間に緯糸を通すときに使われる杼(ひ)という道具ですけど、これなんかも古いので、大切に使わないといけないですね。織る時は、手織り機のご機嫌をうかがいながら、糸ともおしゃべりしながらです。
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- とても大切に使っているという経糸の間に緯糸を通すときに使われる杼(ひ)
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- 手織り機が古くもうパーツがないそうで歯車のネジに釘を代用
―なるほど…。この筑後地方に久留米絣が産業として残ってきた背景には、機械化や合理化してきた部分もあるとは思うんですが、今おっしゃっていたように産地の中で「互助」し合える関係性を築いてきたことも要因だったかもしれませんね。それでは最後に、あらたにさんがお好きな柄を教えて頂いても良いですか?
今日の工房で織っている中だと・・・ちょうど、あの機で織っている唐草が好きですね。大胆で。大きな柄ですよね。めりはりがある、そういう柄が好きです。
- あらたにさんが好きだという大胆で大きな唐草の柄